喪失と孤独

昨日熱発したSさんは、緊急搬送されたあと、インフルエンザとか肺炎等の病状はないということで、昨晩のうちに帰所され、ホッとしました。

現在、読んでいる本の紹介です。

高齢者の妄想―老いの孤独の一側面 (メンタルヘルス・ライブラリー)

高齢者の妄想―老いの孤独の一側面 (メンタルヘルス・ライブラリー)

本書は、高齢者の妄想をテーマにした論文集です。
本書で紹介されている事例は、当デイサービスにおいても、日常的に見聞する事例ばかりで、特に目新しい 事例はないです。
特に、作話と被害妄想は、ヒトの脳の自然な産物だとのことです。
そこには、その人にとっての「意味の世界」の保持という心理的力動が動いているとのことです。
もの盗られ妄想に代表される被害妄想には、「意味の世界」の防衛という側面が濃くて、重度記憶障害に由来する繰り返しが多い作話とも解釈できるとのことです。
人は年齢を重ねるたびに、社会や家庭での立場や役割を喪失し、配偶者や同胞や親しい人との別離などの人間関係の喪失。住み慣れた家、懐かしい故郷の山河、自分の過去や足跡を思い出すよすがとなる物の剥奪等の喪失感は、若い時と違って、あらたな適応が期待できない状況で起こるとのことです。
孤独にどんどん落ち込んで行くことになります。
そうすると妄想のなかに生きざるを得ない状況になってしまうとのことです。
人間は、孤独に耐えられない存在なんだそうです。