チーズの目 57

 昨日の夕日でてっきり晴れると思ったのに、雨・・・。
 でも、今はもう止んだから、ここの家のパパとちょっと遅めの朝の散歩をしてきたところ。
 今日の午前中の散歩を書いておこう。
 見上げると、空は雲にすっぽり覆われている。
 だけれど、雲の層がうすいんだろうか、眩しくて丸い太陽が光を放って、自分の姿をはっきりと見せている。
 
 いつもの長細い公園には、黒くて大きな犬がドデンと草叢の中に、同伴者と立ち話をしている女性の横に横たわっている。
 まるでエジプトのスフィンクスのように威厳のオーラを漂わせて。
 僕は、その姿を見て理性もなく吠え出してしまった。
 「ワン。ワン。」と。
 すると、すぐにここの家のパパは、僕を抱き上げて、申し訳なさそうに、そのスフィンクスの横を通り過ぎようとした。
 スフィンクスの同伴者の女性も、すごく困った顔でここの家のパパに
 「ごめんなさいね。」って謝っている。
 「いいえ。」って、ここの家のパパも、「なんで、吠えるんだよ。」って同伴者の女性に聞こえないように、そしてグチリながら、僕を叱責する。
 叱責されても、僕としては困るんだよね。
 たしかに、きっとあのスフィンクスより、僕の方が断然エチケットとして悪いんだ。
 なにせ、あのスフィンクスは、ただ同伴者の横に座っていただけなんだものね。
 僕が、勝手にあのスフィンクスが漂わせるオーラに挑みかかったんだから。
 まるで、風車に立ち向かうドン・キホーテのように、・・・ちょっとちがうか?
 これもやっぱり犬の本能で説明が出来ないことなのかも。
 と、少し反省をしながら、いつもの指定席で瞑想中。
 ここの家のパパは、またカタカタとキーボードに向かって何かやっている。
 今流れているのは、R.Cサクセッションの「ぼくの好きな先生」。