チーズの目 52

 久しぶりの青空。
HERE COMES THE SUN.
 ここの家のパパが、朝早くから起き出して、カタカタと音を立てている。
 僕は、軽く前足を伸ばして背伸びをする。
 「いつでもお出かけOK。」って、合図を送る。
 草の葉の上には昨日の雨の滴が残っていて、そこに朝の太陽の陽射しが、まるで透き通ったジュエリー、それを僕は舐めている。
 本当に今朝はいい天気だね。
 たくさんの友達に会ったよ。
 みんなも僕と一緒で、この太陽と青空を待っていたみたいだ。
 さぁ、いつものコースをぐるっと回ってくるとするか。

 午前中に、ここの家の人みんないなくなっちゃったから、僕1匹。
 いつもの指定席でごろっと瞑想中、いつか夢の中・・・・・・・。
 
 あの足音はここの家のパパのお帰りか、早速カタカタと音をさせている。
 カタカタ音が終わるまで、このままごろっとしてよ。
 
 あっ、カタカタ音が終わったな。
 じゃ、そろそろ夕方の散歩にしますか?

 今日の散歩のエピソードを書いておこう。
 今日も、いつものコースを歩いていたんだ。
 そして、葱坊主のマンションの前で、幼稚園生ぐらいの女の子1人と男の子2人に出会ったんだ。
 女の子は、僕を見て
 「あっ、可愛い。」って、いつもの言葉を貰った。
 いつもだったら、そこで「さよなら」ってことになるんだけれど。
 今日の3人は、僕の後をついて来るんだ。
 まるで「ハメルーンの笛吹き男(犬)」みたいに。
 そして、その中の男の子の1人が、ここの家のパパを追い越して、僕のリードを掴むもんだから、下を向いて歩いていた僕は、突然何が起きたんだと、振り返って、ここの家のパパに助けを求めたんだ。
 それをわかってくれた、ここの家のパパは、その男の子に、
 「ごめんね。
 その手を離してくれる?」って、言ってくれたから、何とか呪縛から解放されたんだ。
 そうやって、僕たちが、立ち止まっていると、今度は女の子が、
 「ねぇ、ねぇ、おじさん。この犬なんて名前なの?」
 「チーズだよ。」って、ここの家のパパが答えると、
 「ふ〜ん。チーズね。かわいいね。」って言ってくれた。
 ちょうど、その時、逆方向から、ジャスティって言う名前の友達と同行者が歩いて来たんだ。
 そうすると、今度はその子たちは、ジャスティの方に興味が沸いたみたいで、そっちに行っちゃった。
 それで、僕たちは、その子達に「さよなら。」って言って別れたんだ。
 「本当に、小さな子って、なにするかわかんないよなぁ。」