チーズの目 49

 今朝は、ここの家のパパといつものコースを散歩に行ってきた。
 最近、よく出会うのは、老夫婦なんだ。
 いつも2匹が、仲良く並んで散歩しているんだ。
 同行者のおばさんの話だと、2匹とも15歳っていうから、僕にとって相当な先輩なんだ。
 初めて、この夫婦に出会った時、いつものように僕が、近づいたり離れたりして、うるさくつきまとっても、ご夫婦とも泰然自若として風格があるんだ。
 本当にうらやましい先輩だよ。
 僕が電信柱鼻をくっつけて、匂い探しをしているとき、後の方から小さな男の声が近づいてきたので振り返って見ると、立ち止まって泣きじゃくっている男の子とその男の子を早く来なさいと声を掛けるママが近づいてきた。
 そのママが僕の横を通り過ぎるころ、
 「早く来て。
  耳飾をした可愛い犬がいるから、
  早く、早く。」って、僕を出汁にしてその男の子を呼び寄せているんだ。
 僕もどうしていいのかわからないので、ただそのママの顔を見上げたんだ。
 そうしていると、泣きながら近づいてきたその男の子は、僕を見て
 「あっ、本当にかわいい。」って、少し泣き止んだみたいだけれど、すぐにまた
 「やだー。行きたくない。」って、立ち止まっている。
 「マー君早く来なさい。
  ママは、これから仕事なんだから、早く来て。」って、呼びかけるんだけれど、その男の子は、歩道より一段高い駐車場端っこに座り込んで動こうとしない。
 僕たちは、その二人を追い越して立ち去ったから、その後のどういう展開になったのかは、わからないけどね。

 午後も、ここの家のパパと散歩、今日はいつものコースとは逆コースを歩いてきた。
 今日のエピソードは、この前話した2年前に僕の先輩を亡くして、その後犬を飼うのを止めたっていう家の向かいなんだけれど、そこには僕の仲間が居るんだ。
 今日ちょうど家の前を通りかかった時、その仲間が門から出る準備をしていたんだ。
 でも、まだそのときは首輪にリードが結ばれていなったんだ。
 そこに、僕が突然飛び込んできたものだから、そこのおばさんはビックリしちゃって
 「まだリードをつけてないのよ。」と言いながら、僕の仲間の首を掴んでた。
 ここの家のパパも僕が突然猛ダッシュしたもんだから、引き止められなかったんだ。
 そのあとすぐに、ここの家のパパは、そのおばさんに謝って、その玄関口から出て行ったけどね。
 悪いことをしちゃったかな。