チーズの目 46

 今朝の散歩は、ここの家のパパといつものコースを回ってきた。
 で、ここの家のパパから聞いたことなんだけれど、結構僕って、通り過ぎる人が、僕を見て、ニコッと微笑を洩らすんだって。
 別段自惚れているわけじゃないけれど、
 「かわいい。」っていう声はよく耳にするんだ。
 それで、停留所脇のベンチにバス待ちでベンチに座っていたママさんの前を通り過ぎる時なんだけれど。
 いつもの調子で、僕は、そのママさんの足下にじゃれついたんだ。
 そしたら、そのママさんは、本当に大きな声で、
 「いやあー。」って言いながら、まるで野生の動物に襲われたように、右手で僕の前足は払ってきたんだ。
 僕としては、ちょっとしたゲームというか挨拶のつもりだったんだけれど、ママさんにとっては、まるでインベーダーからの侵略みたいだったのかもしれない。
 本当に悪いことをしたなぁと、反省しています。

 それから、このまえ話した葱坊主のあった前のマンションの通りに5人ぐらいの若いママさんたちと幼稚園児たちが、ちょうど幼稚園バスを待っていたんだ。
 その若いママさんたちの中の1人が、僕を見て、
 「わぁ、かわいい。かわいい。」って、連呼するもんだから、さっきの失敗は完全に忘れてしまって、僕は、ここの家のパパのリードの圧政にも負けず、その若いママさんの足下に飛びついていったんだ。
 そしたら、今度の若いママさんは、後ろ足立ちしている僕の視線のところまで、屈んでくれたんだ。
 近くにいる、若いママさんの娘さんに、
 「見て。見て。かわいいから。
 ほら、ほら、この水色の髪飾りもかわいいわよ。」って。
 僕も、本当にうれしくなって、その若いママさんのほっぺたを舐めたんだ。
 「わぁ。プチュってキスされちゃった。」って、ここの家のパパに同じことをしたら、そっぽを向かれるのに、この若いママさんには、受け入れてもらえた。
 でも、僕の突然の行為に対する「傾向と対策」ができていなかってのが、正解かな。

 人間っていうのは、大きな目をした、丸い頭の、小さな頼りなげなものを見ると、誰からも教えられなくても、愛着を感じるものらしいって。
 そして、僕たち犬は、その人間の弱さに付け入ることができたから、今日も生き長らえることが出来ているって、いう人がいるけれど。
 それって、「正解」なのかな?