チーズの目 17

 わぁっ、今日は雨。
 といっても、小雨。
 ここの家のママは、出かけてしまった。
 朝の散歩がないままに。
 やっと、ここの家のパパが起き出し、ソファに腰掛けた。
 僕はその膝の上に乗って、ここの家のパパの手を舐め始める。
 「散歩に連れて行って欲しい。」って僕の気持ちを察してほしいんだけれど、今のところはダメだ。
 僕の気持ちを察しようとせず、又CDプレイヤーに電源を入れた。
 今日は、珍しくポール・マッカートニーの初ソロアルバムの「ポール・マッカートーニー」だ。
 このアルバムが発売されてから、もう40年以上が経つみたい。
 僕が生きてきた年の10倍前だって。
 ここの家のパパが、中学か高校生の頃に発売されたらしい。
 なんとのどかな雰囲気の音楽じゃないか。
 「ジャンク」ってスゴクいい曲だよね
 次は、エルトン・ジョンの「YOUR SONG」が出だしのアルバム。
 このピアノ、アコスティック・ギター、ウッド・ベースとストリングスの音、それにエルトン・ジョンのの声。今僕をやさしく包み込んでくれるこの暖かさは、本当に心地いい。
 次が、「BORDER SONG」。
 これはこれで力強いかんじ。
 それから、「THE GREATEST DISCOVERY」。
 この曲も本当に優しい気持ちになれる、とってもいい雰囲気の曲だ。 
 僕は、いつのまにかまた眠りの世界に突入したみたい。

 ぐっすり眠ったみたいだ。
 ここの家のパパの動きで目が覚めた。
 どこか出かけるのかな。
 今日は、寒いなぁ。
 静かだなぁ。
 近所からも、何の音も聞こえてこない。
 ここの家のパパは、何やってるんだろうと思いながら、僕はいつもの指定席の毛布の上で丸くなって眠ってる。
 
 「外の雨が止んだみたいだから、散歩に行こうよ。」とここの家のパパの足下にじゃれ付いていたら、僕の気持ちを察したみたいで、散歩に行くことになった。
 外に出てみると、まだ雨は完全に止んでいなくて、それに今日はとても寒い。
 だから、僕は、少し小走りでいつものコースに出ることにした。
 丁度、小学生の下校時間にかち合ったみたい。
 僕を見て、低学年の女の子が、僕を見て、
 「あっ。白い犬かわいい。」言ってくれたのうれしかった。
 その女の子の後ろを歩いていた男の子が「この犬見たことある。」って言うから、その男の子をチラッと見たんだけれど、僕には記憶がない。そうすると、その男の子は
 「いや、見たことないか、忘れた。」って言って、僕の横を通り過ぎてしまった。