いのちと放射能
- 作者: 柳澤桂子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/09/10
- メディア: 文庫
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とは言っても、著者は分子生物学を究めてられ、その後も研鑽されていますから、私なんか足元にもおよびません。(苦笑)
この本を読んで改めて、放射能のこわさを思い知らされました。
まず、放射線は物質を通り抜ける強い力をもっていて、この放射線を出す作用を放射能と言うんだそうです。
放射能を持つ原子は、放射線を出してこわれて別の原子になり、ついには放射線を出さなくなるんだそうです。これが半減期ということです。
それから、放射線の許容量は、「それだけの放射線を浴びても安全です」ということではなくて、本来ならば放射線を浴びないのがいちばんいいのだけれど、「それくらいまではしかたないでしょう」という値なんですね。だから、著者は、これからもっと放射能の詳細な内容がわかれば許容量が引き下げられる可能性があると書いてます。
私たちは、天然の放射性物質や地球の外からくる宇宙線のために、絶えず微量の放射線を浴びているんだそうです、それは年間0.0005シーベルトぐらいなんだそうです。
それほどの微量の放射能でも、人間の一部のガンの原因になっていると考えられているのだそうです。
政府が言うように、微量だからといって、決して安心できる品物ではないということです。
広島・長崎の被爆者の統計資料から、どれくらいの放射線量で、どれくらいのガン患者が発生するかというデータがあるそうですが、そのデータも新しいことがわかってくるにつれて、見直しが迫られているとのことです。
放射能のゴミについて、一人の人が一年間に使う電気を原子力発電で生産するためにでる放射性のごみを、まあまあ安全というところまで水で薄めようとすると、100万トンの水が必要で、千年たっても1000トン、百万年たっても10トンの水が必要なんだそうです。
生物にとって必要な水を、そんなことに利用していいのだろうかと疑問が沸いてきます。
放射能は、化学物質による汚染とは比較できないほど問題があるということです。
放射能以外の環境破壊に対しては、異常なほどの興味を示すマスコミも、どうして放射能には積極的に報道しないのでしょうね。
この著書の中に、医師の故細川宏氏がガンでなくなる28日前に書き残された文書が記載されてます。
「一.一日一日をていねいに、心をこめて生きること
二.お互いの人間存在の尊厳をみとめ合って(できればいたわりと愛情もって)生きること
三.それと自然との接触を怠らぬこと」
この言葉に対して、著者は、「これは細川氏だけでなく、多くの宗教家や修行者や思索者や苦しみを生き抜いた人々が到達する共通の結論です。
すべての欲を捨て去ったときに、人間は人間にとって一番大切なものが何であるかということを知るのです。」
ここに書かれた内容を、今こそわが国の政界の人たちに、考えてもらいたいものです。