社会見学 トット君10
トット君の通っている小学校では、高学年になると社会見学の授業がありました。
働く人たちの仕事場を見学する授業です。
見学先は、どこかというと広島市に本社のある新聞社工場でした。
その日トット君たちを乗せたバスは、広島市を目指して走ります。
バスの中のトット君たちは、もう遠足気分です。
そして、目的地に着き、工場の中を見学です。
初めて見る工場は、輪転機の大きさとインクの匂いでいっぱいでした。
そのあと、トット君たちは、平和公園に行きました。
それから、原爆資料館を見学しました。
言葉では、トット君たち原爆の怖さについて聞いたことはありました。
でも、その中に展示されている物を見るのは初めてです。
それは、とても平静な気持ちで見ることができませんでした。
まるで、そこは恐怖の館。
人影だけが残った石。
高熱で形が崩れた飯盒。
原爆が落下された時間を指したまま止まって針が進まなくなった時計。
トット君は、思いました。
誰がなんと言っても、たとえ戦争にどんな理由があったとしても、
戦争は絶対に良くないことなんだと。
帰りのトット君たちのバスの中は、行きと違ってみんな押し黙ったままです。
もうすぐ、8月6日。
静かに平和を祈ろうと思ったトット君です。