チーズの目 88

雨上がりの朝。
見上げると空は、雲に隙間なく埋められていて、低くて黒い雲が風に押されて東の空に飛んでいく。
家を出るときには、薄日もさしてきた。
今朝の散歩は、ここの家のパパと今行って来たところだよ。
いつもとは違う坂道の上にコンビニのあるコースだ。
ということは、この先のコンビニで買物か。
ああ、やっぱりそうだ。
いつもの食料品店は、この時間ではまだ開店前だもん。
僕は、コンビニの駐車場にある立看板の柱に結わえられる。
中年のおじさんは、コンビニの入口付近で缶コーヒを片手にサンドイッチをほおばっている。
バイクのお兄さんも、缶コーヒ片手に菓子パンを食べている。
ここの家のパパが、コンビニから出てきた。
散歩続行。
コンビニの裏手の住宅街の中を歩く、僕の匂いセンサーにピット反応。
匂いの元を探して、あたりをウロウロ。
あった。と匂いの元で仰向けに転がろうとしたら、ここの家のパパの握るリードに引っ張られて、匂いの元に後一歩というところで。
今日も、僕の楽しみは奪われた。
僕は、ここの家のパパを上目遣いで睨みつけるけれど、今回も・・・。
向こうから小さな女の子が縁石の上をバランスを取りながら、同伴のパパと・・・
でも、パパにしてはちょっと老けた感じ。
おじいさんかな。
手を繋いで歩いてきた。
何も会話はないけれど、ついほほえましくなって、僕は二人が通り過ぎて行くのを見送った。
僕が通り過ぎる家の中から、仲間の鳴き声が聞こえてくる。
それまで庭の奥まった所にいた仲間が、僕が近づくのがわかったのか、鉄製の門近くに現れた。
ここの家のパパは、びっくりして慌てて逃げ出そうとする。
僕は、涼しい顔をして、
「何やってるんだか。たいした事ないじゃないか。」と、通り過ぎる。
でも、ちょっと気になったんで、その仲間の所にそろそろと戻ったんだ。
そこにいたのは、大きな犬だったから、僕は慌てて逃げちゃった。
あ〜あ〜。こわかった。
雨が、ポツリポツリと落ちてきて、アスファルトの水溜りの上で輪を作る。
「チーズ、また雨が降り始めたから、帰るぞ。」と、ここの家のパパは帰りを急ぐ。
僕の匂いセンサーが感知し始めた。と思ったら、ここの家のパパは、僕を抱き上げて急いで帰り始めちゃった。

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