主人公 さよなら 6

1975年6月。
男は、一浪して東京の大学に入学した。
いつものように、男が学校から帰って、郵便受けを開けてみると、そこには高校の同級生から一通の手紙が入っていた。
男は、その同級生のことを思い出そうとした。
たしかに、その同級生とは、中学・高校を通じて6年間ずっと同じクラスだった。
彼らが通ったのは、県立高校。
しかし、同級生は男にとって異性の同級生だから、挨拶を交わす程度でまともな会話をした記憶がなかった。
その同級生は、どうやってその男の現住所がわかったのか、男にとっては疑問だった。
男は、封を開いて読み始めた。
書かれた文面を読み、男は正直驚いた。
なんとその手紙は、その同級生から男に対する「告白文」だった。
男は、この便箋に書かれた内容について、この文面を読むまでまったく忘れ去っていた。
たしかに、そう言われれば、ここに書かれていたような事があったかもしれない。
しかし、それにしても何でそれを今ごろになって、書いてきたんだ。
男の頭の中は、クエスチョンマークでいっぱいだった。
だからといって、女性から告白されるのも嫌な訳じゃない。
しかし、高校時代ならともかく、今は遠く離れて、そんなに簡単に会う事なんてできない。
とりあえず、女からの要望は、文通をしたいとのオファーだったので、男は返事を出した。
その後、二人は何度か手紙のやり取りを行って、お互い夏休に帰郷した際に会う事にした。

8月。
男は、女の自宅に電話を掛け、東京から帰って来た旨伝え、女の自宅近くの小学校で会う事にした。
女の自宅近くの小学校の校庭で、二人は出会いお互いの近況と昔話をした。
お互い手紙では伝えられなかった内容を語り合った。
その後も、二人の文通は続いた。

翌年3月には、女は京都の短大を卒業して、地元の幼稚園に勤め始めた。
男は、東京の大学で一応学校には行っていた。
しかし、授業に顔を出すよりも同好会(自主映画創作)やその当時付き合ってた彼女と彼女に会う事のほうが忙しかった。
1977年。
その後も、二人は何度か手紙のやり取りは続いた。
そして、女から男に届いた最後の手紙は、
「地元で見合いをして結婚することになった。
だから、『さよなら』」

BGMには
さだまさしさんの「主人公」かな・・・。


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