テレビっ子のはしり トット君９

トット君の家では、割と早くから家にＴＶがあった。
それは、おばあちゃんの話しだと。
「トット君が、いつも社宅の集会場に設置されているＴＶの前に陣取って、他の人に見せなかったからなんですよ。
それで、トット君のパパが、近所の手前もあって、かなり無理してＴＶを買ったんです。」との裏事情があったのだ。

そんなことがあったことなんて知らないトット君。
その頃、よく見ていたのは、

♪　雲か嵐か　稲妻か

っていう主題歌で始る「ナショナルキッド」かな。
それから「まぼろし探偵」とか「七色仮面」とかの、活劇冒険ドラマ。
人形劇では「チロリン村とくるみの木」。
人形劇とはちょっと違うかな、ぶたの３兄弟の「ブーフーウー」。

トット君が、小学校に入ってからは、ＴＶアニメが始まった。
「８マン」「スーパージェッター」「宇宙少年ソラン」のＳＦもの。
「鉄腕アトム」ついては、トット君の記憶では、実写版を見たことがあるといってた。
それから、「ワタリ」「風のフジ丸」の忍者もの。
忍者ものだけど、ちょっと毛色の違う「忍者部隊月光」が流行ってた頃のこと。
トット君んちの近くの高学年のお兄さんは、余った鉄板を上手く切り抜いて手裏剣を作って、トット君たち下級生に見せびらかしていた。
それから、裏山の竹薮のなかにどこからか仕入れてきた板や段ボールを持ち込んで秘密基地と呼んで隠れ家を作った。
でも、山の持ち主にその隠れ家が見つかって、トット君たちは皆すごく叱られた。
「崖崩れしそうな竹薮の中に、こんな危ないものを作ってはいけない。」って。
今から見ると、トット君たちは、「テレビっ子のはしり」だったんだ。

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