〔随感日記〕「おたがいさま」って、生きている?
午後近くに家を出て、地元のハローワークへ自転車のペダルを漕ぎ、西口から東口を繋ぐ地下トンネルを潜って、出口近くの階段の脇に鉄の扉があります。
それは、前回紹介した今この町で行われている「アートラインプロジェクト」の展示品のひとつです。
そして、その展示品の手前に、壁に落書きのようなものが描かれた板が貼られているのです。その前で、お年を召した女性が2人、立ち話をしています。
洩れ聞こえてきたことは、
「さっきは、こんな所に扉があるのと不思議に思ったけど、この板にも何か悪戯書きのようなものが書いてあるの、なんなのかしら。」
「さっきの扉でしょ、ドアノブを引いても押しても、開かないんだから。」
という他愛のない会話です。
その会話を聞きながら、開かない扉の前で立ってました。
扉の上の方に水位が線引きされています。
と、突然トンネル出口付近で、若い男性の怒鳴り声が聞こえました。
ふと、見上げると、そこには、ちょうど私の前を自転車を押していた年を召したた男性が、若い男性に怒鳴られている風景です。
何を怒鳴っているのかというと、
「ちゃんと謝れ。
お前が先に出てきたんだろう。
サッサと謝れ。」と、すごい剣幕なのです。
思うに、トンネルの出口は、ちょうど自動車道と抜け道の交差路なので、自動車道から抜け道に入ってきた若い男性とトンネルを抜けた初老の男性の接触があったようなのです。でも、自転車が転倒したようすでもないので、ぶつかりそうになっただけだと思います。
初老の男性は、若い男性の怒鳴り声の大きさにびっくりした様子で、声はきこえませんが、ゆっくりした動作でしきりに謝っているように見えました。
若い男性も、それ以上のことは言いませんでしたが、立ち去る時に初老の男性の自転車を足蹴にしてました。
時間にして本ほんの数分の出来事でしたが、そんなに声を荒げて怒鳴ることでもないだろうにと、いう憤りを感じてしまいました。
それから、今度は私がトンネルの出口に近づいた時、ちょうど目の前に初老の女性が、自転車を止めてちょっと体往生しているみたいでした。
そこに自動車道から若い女性が、自転車に乗ってやってきてました。
その初老の女性の立ち位置が、ちょうど抜け道を通せんぼしている格好になっているものですから、若い女性が入って来れません。
しかし、その若い女性は、初老の女性が、車道に出て行くまで待ってました。
私も、彼女たちが、上手く通り抜けるのを見てた状態です。
生きているうちは、「おたがいさま」っていう気持ちがあると思うのです。
さっきの若い男性のような方が、増殖しないことを望みたいです。