126 誰そ彼

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夕方になると、マイク放送が流れてくるんだ。
「歌の町」ってメロディーが。
良い子が帰る時間を知らせるんだ。

  ♪ よい子がすんでるよい町は 楽しい楽しい歌の町
  
だから、僕は、ここの家のパパに、
「もうそろそろ涼しくなったから夕散歩行こうよ。」って、遠吠えをしたんだ。
それも2回も。
それなのに、ここの家のパパは、PCをカタカタと打ち込んで動こうとしない。
やっと、一段落着いたみたい。

玄関を出ると、目の前にある2階家の屋根の上に黄金色の夕陽が、今日最後の
眩しい光を放ちながら、沈もうとしている。
僕たちは、いつものコースを歩いた。
途中、新しい仲間に出会った。
ちょっとだけじゃれて別れた。

頭の上の空に浮かぶ雲はピンク色なのに、西の空は黄金色だ。
自動車の白や黄色のヘッドライトも灯り始めた。
国道に繋がる1本道に点在する防犯灯は、一直線に繋がって見える。
そして、信号灯の色が鮮やかに夕暮の闇の中で光ってる。
夕陽が沈んだ空は、黄金色から紅蓮色に変わっていく。
行き交う人の顔も暗くてわからない。
だから昔の人は、「あれはだれか(誰そ彼)」言ったんだって。
それは、いまでは「たそがれ」になったんだって。
そんな黄昏時の暗くなった町を、家路に急ぐんだここの家のパパは。
僕は、もう少しこの時間を楽しんでいたいのに。。。



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