夕暮の帰り道 トット君2

トット君は、小学2年生。
夜汽車に揺られて、お母さんが生まれた町にやってきた。
お母さんが生まれた家は、かなり大きな農家だ。
牛小屋があって、朝は絞りたての牛乳を初めて飲んだ。
搾りたての牛乳は、一旦煮ないといけないと教えてもらった。
おじいちゃんからは、藁編みを教えてもらった。
そして、庭では大人用の自転車に初挑戦。
大人用の大きな自転車だから、サドルにちゃんと座れない。
だから、「三角乗り」。
でも、何とか乗れるようになった。

次の日、お母さんが隣町の親戚の家に挨拶に行くと言った。
トット君は、自転車に乗れるようになったのが嬉しくて、お母さんが3人乗り(妹は背中におんぶ)して行くと言うのに、
「僕1人で自転車に乗っていく。」と、トット君は言い張ってお母さんを困らせた。
最後にはお母さんも、トット君の頑固さに負けた。

隣町の親戚の家までは、かなりの距離がある。
行きは、トット君も嬉しさ一杯で、なんとか行くことができた。
親戚の家に着くと、ちょうど高校生の親戚のお兄さんが居た。
そのお兄さんが、優しい人で家の中ではしゃいで回った。

夕暮の帰り道。
トット君は、親戚の家を出て、橋の袂まで来た。
さすがに、トット君は疲れてしまった。
「もう、これ以上自転車漕げない。」とトット君は、ごね始めた。
「だから、『1人じゃ来れない』って、言ったでしょ。
自分で1人で行くって言ったんだからね。」と、お母さんは言い放った。
そして、そんなトット君を置いて、自転車を漕ぎ始めた。
1人取り残されたトット君は、周りは段々あたりは暗くなってくるし、取り残されたて悲しくなってきた。
でも、お母さんの自転車は、そんなトット君のことなんかお構いなしにどんどん進んで行く。
トット君の目には、みるみる涙が溢れてきた。
お母さんに追いつこうと、トット君は、大きな自転車を押して進んだ。
トット君は、腕の力が入らないので、自転車のハンドルが自由に操れなくなって、ヨロヨロ状態だ。
周りの人の声も、トット君には入ってこない。


やっと、お母さんが引き返してきて、
「だから、『1人じゃ行けない。』って言ったでしょ。」と今度は怒っていなかった。


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