チーズの目 28

 わぁお、今日もいい天気だ。
 朝の散歩は、ここの家のママに連れて行ってもらった。
 そして、散歩から帰ってみると、まだここの家のパパは眠ってたので、僕はパパを起すつもりで、少し爪を立てた前足を使って、ここの家のパパの頭をゴシゴシとヘアーブラッシングをしてあげたのに、ここの家のパパは「痛い。痛い。」と、犬の親切を無にする言葉を投げつけてきた。
 「自分だって、僕が嫌がっているのに、僕の身体を無理やり抑えるか僕の首の下を撫でながら、僕の身体の自由を奪って、ブラッシングするじゃないか。」と僕が目で主張をしても、理解してもらえなかった。
 すると、ここの家のパパはムクッと起き出して、僕に襲い掛かる態勢を示したので、僕も身構える。
 身体を低くしていつでも応戦可能なポーズを取る
 と、先方は僕の威嚇に降参したのか、煙草をくわえて小さな裏庭へ出て行った。
 ここの家の家族(特にここの家のママ)は、嫌煙権主張論者のため、室内での喫煙は絶対禁止。
 そのため、ここの家のパパは、外で喫煙するしかない。
 たまに、ここの家のパパは、僕を抱き上げて、僕の顔に向けて煙草の煙を吹きかけることがある、実にいい迷惑だ。
 今朝のTVで、煙草に引き続き飲酒も自主規制の対象になりそうだっていう内容の放送していた。
 それを見て、ここの家のパパは、「なんでもかんでも禁止・禁止って、よしだたくろうさんの楽曲じゃないけれど、『他人に迷惑をかけなければ、自由でもいいんじゃないか』って思うんだけれど、それじゃぁいけないのかねぇ。」って、愚痴っている。
 僕ら犬は、一見自由そうに見えるけれど、実は非常に不自由な生活を強いられているんだ。
 猫君みたいに、リードから自由・外出自由って、自由はないんだからねぇ。
 散歩していると近所の友達も、留守宅の家の中で僕の仲間が、「ワン。ワン」と自己主張しているのをよく耳にする。
 僕たちも、自由になりたいんだっていう主張なんだゾ。
 今日流れている音楽は、ボブ・ディランさんのCDタイトル「グレイテスト・ヒッツVOL3」僕は、いつもの指定席で丸くなって聴いている。 


 太陽の光が、ガラス窓を突き抜けてカーペットに窓ガラスの桟の影を作る。
 この部屋に太陽の光が、入り込んでくる時間だ。
 今日は、ポカポカと暖かく、そして今、姫神さんのCD「まほろぼ」の音楽が流れている。
 このまま、昼寝をするのにこれ以上ないぐらいのヒーリング音楽。
 僕の頭の中では、アルファ波が尽きることのない湧き水のようにコンコンと湧き出してくるのを感じる。
 そのくせ、ここの家のパパが動く気配を感じると、つい意識が気配のする方へ向いてしまう。
 「外出したい気分なんだけれどなぁ。
 音楽聴くのもいいんだけれど、早めの散歩に行こうよ。」っていうテレパシーを、今ここの家のパパに送っているところ。
 届いたかなぁ?

 僕のテレパシーが届いたみたいで、あれから2時間ばかりの少し長めの散歩を終えて帰って来たところです。
 ここの家のパパは、僕の足洗いと僕の排泄物のトイレ流し等を終え、音楽を流しながら洗濯物の取り込みを行っています。
 今、流れている音楽は、チャイコフスキーさんの「バイオリン協奏曲」、バイオリン演奏は、KYUNG−WHA CHUNGさんです。
 歩きつかれているので心地よく聴くことができます。
 少し早いですが、僕はこれから寝ます。