チーズの目 20

 ここの家のパパが、やっと起き出した。
 今日は、日曜日だから他の家族は、みんな眠っているみたいで、起き出した気配がしない。
 僕は、前足を床につけて精一杯の背伸びをしてストレッチ。
 「いつでも外出OKだよ。」と、ここの家のパパにアピールをする。

 そんな僕の気持ちを察してくれないのか、ここの家のパパは、なかなか出かける準備をしない。
 だから、僕は待ちくたびれて、いつもの指定席の毛布の上に横たわる。

 やっと、外出する気になったみたい。
 僕は、玄関口に両足立ちして、僕のうれしさをからだ一杯表現する。
 玄関が開いた。
 さぁ、外出だ。
 今日は、昨日と違って、太陽がまぶしいねぇ。
 そして、「いつもの公園にたどり着くと同時に、僕はナズナが交じった草叢に、鼻を突っ込み、匂い探し。
 今日の先客の匂いを確認する。
 放射状の黄色い花びらと白い綿毛のタンポポとそれと同じような放射状の黄色い花(名前はわからないけれど)が、緑の草叢の中でキレイに咲いている。
 今日の「このいつもの公園」は、子供とそのPTAの方々で公園の美化運動日なのかな?
 ビニールの袋を持って「ゴミ集め」をしているっていうか、PTAの方々の世間話時間(悪意じゃないよ)、でも朝からお疲れ様です。
 皆さんのおかげで、「このいつもの公園」の美化が保たれているのだから、感謝。といいながら、僕はいつもの「Nature Calls Me(自然が僕を呼ぶ)」行為。
 そして、その公園を出て、路上で、初めてであったイヌさんに挨拶をしようと近付く。
 先方の同伴者の方が、
 「うちのイヌは、好き嫌いが激しいから、すぐ噛みつくのよね。
 でも、お宅のイヌには、噛みつかないみたいね。」と言いながら、最初は、彼女のリードをしっかり握り、僕に近づけないようにしていたけれど、彼女のリードを緩め始めた。
 僕は、結構動きが身軽だから、彼女の周りを近付いたり離れたりの繰り返し、彼女のお尻に挨拶の匂い嗅ぎに挑戦する。
 彼女の方は、僕の鼻に自分の鼻を近づけてくるんだ。
 だけれど、僕は尻込みして、彼女のうしろに回り込む。
 誤解されると困るけれど、僕たちイヌ界での挨拶だからね。
 そんなことを何度か繰り返しているうちに、彼女の同伴者は、僕たちとは反対の方向へ彼女をリードし始めたので、僕たちも歩き出した。。
 前にも書いたと思うけれど、僕の場合、ここのパパに比べたらかなり社交的な性格だと、改めて自信を持った。
 ここの家のパパとの朝の散歩コースには、昭和時代の食料品の何でも屋(酒・煙草・米など)の小さなお店がある。
 このお店で、ここの家のパパは、煙草を買う。
 このお店の女主人は、ここの家のパパが、何の注文をしなくても、この家のパパの顔を見るといつもの指定銘柄の煙草を出してくれるんだ。
 でも、今日は、この女主人から、「今日は、品物切れちゃってるわ。」って、素っ気なく言われて、ここの家のパパは、仕方ないから、ついさっき通り過ぎたコンビニへ後戻り。
 今日の朝の散歩は、いつもより少し長い時間歩いた。
 僕は、家が近付いた頃を見計らい、路上に座り込みを始める。
 歩き疲れたんじゃなくて、もっと外に居たいっていうつもりのアピールだったんだけれど、ここの家のパパは、僕を抱き上げて家まで帰ってきちゃった。
 帰りたいんじゃなくて、外にもっと居たかったんだ、こんなに天気がいいんだから。

 午後になって、ここの家のママと次女とが、なにやら外出の相談をしている。
 僕もつれていってもらえそうだ。
 行き先が決まって、E川土手に歩いて行くことになった。
 国道の歩道橋を渡り、JR線下の地下トンネルを潜り抜けて、大体歩いて30分くらいだった。
 着いた当初は、土手の歩道横の草叢に鼻を突っ込みながら、少し早歩き。
 途中から、土手を下って河川敷の草原の中を、やや小走り。
 1時間半ぐらい軽い運動をして、
 「もう、そろそろ帰ろうか?」って言うここのママの提案で帰路に着く。
 JR駅前で、「これから、買い物していくから、先に帰ってて。」というここのママの一言で、僕とここのパパはそのまま家に直帰。
 でも、500メートルくらいの上り坂の前で、僕が座り込んだものだから、ここのパパは、僕を抱き上げて、
 「何だ疲れたのか?」と言って、僕はここの家のパパの腕に抱かれてユッサユッさと揺られながら帰ってきました。
 「本当に疲れたから、時間は早いけれど、もう寝ます。」
 ここの家のパパが、KATE BUSHの「THE KICK INSIDE」の音楽を流し始めた。
 ゆっくり、眠れそうだワン。