チーズの目 15
もう真夜中だというのに、ここの家のパパは何かゴソゴソとやっているから、その音で、僕もつい目がさめてしまう。
でも、もう眠るみたいな雰囲気がする。
もう昨日になるけれど、夕方散歩に出ようとここのパパを誘ったんだけれど、
僕を抱き上げたまま、僕を玄関に連れて行き、
「ダメだよ。
雨が降ってるから、散歩は無理。」って断られてしまった。
確かに雨の匂いと冷たさが僕の毛を濡らしてしまう、僕もこんなに外が寒いとは思わなかったので、ガタガタと震えてしまった。
そして、朝目が覚めると、今日は昨日と違って、雨は降っていない。
ここの家のパパも起き出して、
「いい天気になったから、散歩に行くか。」と、朝の散歩に連れて行ってくれた。
昨日、外に出ていないから、今日は十二分に散歩するぞと、勇んで出かけた。
今日の散歩コースは、いつものコースだ。
途中の公園の叢の中に鼻を突っ込み、
「ああ、これは○○君の匂いだ。僕より先にもうここに来たんだ。」
と匂いを確かめている。
平日だから、公園には誰も居ない。
公園には、ここの家のパパと僕だけだ。
それから、自動車の行き交う大きな道に出て、僕は早くこの道を渡りたいのに、ここの家のパパは、なかなか僕を進ませてくれない。
そうやって、ブラブラと車が止まるのを待って、駆け足で横断歩道を駆け抜ける。
フーフー言いながら、ここの家のパパが、僕の後を追いかけてくる。
いつもより、少し時間が長い散歩を終えて帰宅。
そして、僕は朝ごはんを食べ終えると、いつものソファの上の毛布に横たわりながら、考えた。
昨日と同じなんて書いているけれど、昨日と同じ一日なんてない。
いつもと同じなんて書いているけれど、いつもと同じことなんてないんだ。
一日一日が全部違うのに、同じだと思い込んでしまう。
一日一日が、毎日違うってことに気がつくと、その一日が大切に思えてくることになかなか気づかないんだってことをつらつらと考えていた。
昼過ぎ、天気がいいからここの家のパパは、外出するみたい。
僕も連れて行って欲しいワン。
でも、連れて行ってはくれないみたい。