チーズの目 9
僕の散歩コースの中には、縄文時代の遺跡があるんだ。
縄文時代中期というから、今から4000年以上前のことになるらしい。
だけど、僕たちマルチーズは、もともとイタリア出身だから、その当時日本には住んではいなかったと思う。
僕の生まれ故郷が、イタリアだなんて言われても、生まれてこのかた行ったこともないし、これからもきっと行くことはないだろうから、イタリアのことはまったく知らない。
でも、僕って日本に来てから第何世になるんだろうなぁ。
それも、わからないや。
まぁ、それはそれとして、縄文時代の僕たち犬族(その当時日本にいた犬族)と人間とは、どういう関係だったのかぁとか、その当時の風景とか暮らしとかどうなっていたのかなぁと興味はありますよね。
ただ、縄文遺跡と言っても、そこは今は公園になっていて、「ここから縄文時代の貝塚跡が見つかりました。」っていう鉄柱が立っているだけだから、まったくその当時の面影なんてない。
その鉄柱に書かれた言葉に刺激されて、ああここに昔人の暮らしがあったんだって空想するだけ。
でも、今住んでいる場所が、昔どんなところだったのかって、想像するのって、結構ワクワクするよねぇ。
そして、僕は、見たこともないふるさとイタリアの風景って、どんなんだろうとか、ご先祖様はどんな犬だったのかとか、想像しながら、昨日と同じくソファの上の毛布に丸まっている。