チーズの目 6
あと遠出で思い出すのは、冬になって、ここの家のパパが、隣の町の図書館へ行くのに、付き合わされたことだな。
隣の町までは、4キロメートルぐらいだから、歩くと1時間ぐらい掛る。
あの時は、ここの家のパパは、自転車に乗って出かけたんだ。
そして、僕は、自転車の前の買い物篭の中に入れられていたんだけれど、あの時は風がすごくて、びゅんびゅんと風が顔にあたって大変だった。
だから、僕は買い物篭の中でゴソゴソと態勢を整えていたら、ここの家のパパは、
「籠の中で窮屈なのかな。」なんて一人合点して、僕は籠から下ろされ、そのまま出発ということになった。
僕としては、そんなに走る気は、なかったんだけれど、
「折角の親切を無にするのも悪いし、まぁいいか。」と走り出したんだけれど、僕の癖で、すぐ立ち止まって周囲の匂いを嗅ぎ始めるものだから、なかなか前に進まないってことになる。
でも、これって犬の習性だし、自慢するわけじゃないけれど、なんせ僕たち犬の嗅覚細胞は人間の45倍の2億2000万個も持っているんだから、臭いに関しては、人間とは比べ物にならないくらい、敏感なんだから、仕方ないと思うんだけれど・・・。
しかし、この細胞を数えるのって大変だったと思うけれど、どうやって数えたんだろうなぁ。
それで、ここの家のパパは、又僕を買い物篭に入れて再出発ってことの繰り返し。
そうやって、図書館に着いたら、やはりここも「ペット持ち込み禁止」の張り紙が貼ってあって、ここの家のパパは、僕の首輪から伸びているリードをどこかに繋いがなきゃならないことになる。
なかなかペット用のポールってないんだよね。
ポールのことで思い出したけれど、今年の3月の連休の時に、ここの家のパパとママと次女と行った大きな沼の傍にある公園の中にある図書館の入口に、愛犬用のポールがあるって張り紙があった。
そのポールは、図書館の入口前の道を隔てた所に立っている大きな木の下、調度その木で日陰になる場所にペット用のポールが立てられていた。
そして、その張り紙には、ポールが設置されているという案内と同時に「長時間つないだまま放置した場合は、動物虐待とみなされます。」なんて言葉に、僕たちの気持ちを代弁してくれているとうれしくなったと同時に、もしかしたら長時間放置している人がいるのかなぁとため息。
そして、あの時の僕は、階段に備え付けられた手すりのポールに結わえ付けられるということになった。
そうやって、僕は、ここの家のパパが図書館から出てくるのを待つことになる。
その時、ポールにつながれた僕を見て、小学生の女の子から、
「まぁ、小さくてかわいい。」なん言われて、つい嬉しくってしまい、その女の子の足下に突進しようと思うけれどリードが短いから、行けない。
「なせばなる。」と何度かトライしてみたけど、その女の子の足下へは行けないし、今度はその女の子が僕をなんか恐がっているみたいなので、やめた。
その後、僕はポールの周りをグルグルと走り回り、
「早く出てこないかなぁ。」と、座り込んだ。
でも、ここのパパは、僕と一緒の時は、割と早く出てきてくれるから、そんなに待つことはなかった。
それから、来た道を戻ることになった。
来る時は通り越した橋の手前で、僕は下ろされて、それから土手の上を散歩して、あの日は家に帰った。
あの日も、疲れてよく眠れたなぁ。