146 後姿

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毎朝1番に早起きするのは、実は僕なんだ。
それで、「早く起きて、散歩に連れて行ってくれ。」と、ここの家のパパの髪の毛に前足で優しくタッチするんだけれど、それでも起きやしないから、僕はいつも不貞寝する。
そうすると、ここの家のママが起き出して、朝の一仕事を終えたあと、僕を朝散歩に連れて行ってくれる。
今朝は、ママより先にやっと8時ぐらいになってパパが起きた。
まぁ、昨晩といっても今日の午前2時ごろまで、ここの家の女性軍は、お酒を飲みながらDVDを見てたし、パパはゴソゴソと2階で何か一人でやってたからなぁ。
今日の朝散歩は、そういうことでここの家のパパと出かけた。
最近は、定番になりつつあるここの家のパパとの朝散歩コースだね。
いつものようにぐるっとコースを1回り。
そして、いつものように歩く事に飽きた僕は、ここの家のパパの腕の中でゆらゆらと揺られて信号灯までやってきた。
僕たちが、信号が変わるのを待っていたら、知らないおばさんが隣に立って、僕たちと同じように信号待ち。
そのおばさんは、僕の方を見て僕の頭を撫でながら、
「チーズですか?」って、パパに聞いてきた。
パパは、なんで名前を知ってるんだ、もしかしてチーズの知り合いか?
という疑問符を頭の中で描きながら、「ええ。」と答えていた。
「シーズって本当に可愛いわね。」って言うおばさんの言葉で、ここの家のパパは、“ああチーズじゃなくてシーズかと”頭の中の疑問符が消えていくのと同時に、「いえ、マルチーズです。」と訂正していた。
「あら、マルチーズなの。
毛がふさふさして本当に可愛いわね。
私も、去年までシーズを飼ってたんだけど、死んじゃったのよ。」
「病気だったんですか?」と、ここの家のパパが尋ねると、おばさんは、
「11年間一緒に過ごしてたんだけれど、ある日突然体調を崩してね。
すぐに、病院に連れて行ったのよ。
そしたら、お医者さんが『貧血のようですね。すぐ輸血をしましょう。』って、その日に輸血をしたら、その日に亡くなっちゃったの。」
ここの家のパパは、ちょっと言葉に詰まってた。
「本当に可愛いわねぇ。」って、信号が変わって横断歩道を渡りながら、ここの家のパパとおばさんの会話は続いてる。
「歩かないんですよ。」と、ここの家のパパは、突然僕のことを話題にし始めた。
「えっ、そんな年なの?」
「いいえ、まだ3歳なんです。
最初は、元気よく歩くんですけど、途中から歩かなくなるんですよ。」
「そう。」と言いながら、おばさんは僕の頭を撫でてくれる。
「いつまでも、こうしていたいんだけれど。」と言いながら、おばさんはバス停方面に歩き出した。
そのおばさんの後姿は、ちょっとうつむき加減で、亡くなったシーズ君のことを思い出しながら歩いているのか、なんだか切なそうに僕には見えたんだ。



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