2 ここの家に来てから今日まで

 僕が、この家に来て3年が経ったていうことは、昨日書いたとおり。
 僕が生まれたのは、ここのママと同じ1月で、この家に来たのは、3月らしい。
 次女に聞けば、日付までわかるとは思うけれど、
 僕が、この家に来てから今日までのことを思い出しながら、ここに記録しておこう。
 まず、僕がこの家に来た当初は、ほとんど外出する事はなく、家の中で過ごしていた。
 それは、今もあまり変わってはいない。
 平日の僕の一日は、まずママに同伴してもらって、近所の散歩から始まる。
 これは、僕にとっては、マーキングおよび排泄の時間であり、社会勉強だ。
 大体、近所の友達も、僕と同じ時間帯に散歩する事が多い。
 僕は、どちらかというと犬よりも人間の方が好みなので、つい友達よりも同伴者の足をめがけて突進し、足元でじゃれつくと言う習性がある。
 大体の同伴者は、嫌がらず、僕の頭を撫でてくれる。
 たまに、中腰になって、僕の頭やわき腹を撫でてくれるのが、とても心地よい、だからつい突進してしまう。
 散歩から帰ったら、まずバスルームで、白い毛専用のシャンプーで足をゴシゴシと洗われる。
 そのあと、タオルで水をふき取られる。
 夏はあまり問題はないのだが、冬の足洗いは、はなかなか僕の毛は渇きにくいので、ここのママはドライヤーで乾かしてくれる。
 非常にありがたい、ところが、ここのパパはそこまで気が回らないので、そのまま放置されるから、足の指先から冷たさが体中に広がって、寒くてしかたがない。
 少しは、犬の気持ちも分かってもらいたいものだ。
 それから、朝食の時間だ。
 出される献立は、ほぼ同じ茶色の小粒のチキンライス(主食)とアルミの缶に入った肉類等(副食)のメニューだ。
 完食したあとに、ササミ&ライスステッキーを出されるのが、うれしくてつい食べてしまう。
 そのあと、ここのママは、パートに出かけるので、家の中は僕一人(一匹)になってしまう。
 夕方、ここのママが帰ってくると、洗濯物の取り込みや買ってきた夕食の食材等を冷蔵庫に入れたりと家事を行い、その後、僕を散歩に連れて行ってくれる。
 たまに、ここの次女が家にいるときは、僕の散歩に同伴してくれる。
 帰ったら「うがいと手洗い」ではなく、僕の場合は足洗い。
 それから、夕食だ。
 ここのママは、僕の夕食を準備した後、今度は自分たちの夕食の準備をする。
 大体、次女や長女が帰ってくる時間を見計らって、準備をしているようだ。
 ここのパパは、朝は一番に出かけ、帰宅時間は一番遅い。
 ここのパパが帰宅した時は、他の家族は、既に夕食を終え、TVを見ているか自分の部屋でくつろいでいる時間だ。
 僕は、大体ここの家族の足音を覚えているので、誰が帰ってきたかわかる。
 だから、帰ってきて玄関を開け、リビングの扉を開けると、一目散に突進していくのだが、邪険にされることがほとんどであるが、でも、これが、僕のこの家族に対する愛情表現だと思っているから、やめることができない。
 週末は、たまにここのパパが、(このときは、まだ在職中で、完全週休2日制だった)僕の散歩に同伴してくれる。
 その時、僕の友達の同伴者から「チーズ君ですか?」と聞かれた時のパパの面食らった顔ったらありゃしない。
 「はぁ、そうです。」と、ボソリ。
 「いつもは、チーズ君の散歩は奥さんが、されているのに、今日はご主人なんですね。」
 「はぁ。」と、またボソリ。
 大体が、こんな二言三言の会話で終わってしまう。
 近所付き合いに関して、本当に情けないくらい、ここのパパは、下手だ。
 それに比べて、ママと散歩したときは、こんな会話じゃすまない。
 ああ、本当に、ここのパパのコミュニケーション能力不足には、ここのママが嘆く理由が、よくわかる。
 これが、僕の平均的な一日の生活だ。
 「これで、いいのだろうか」という犬としての疑問がないわけじゃないが、「だからどうする」っていう犬としての能力と限界もある。
 回答なんてきっとないと思う。
 とにかく生き続けて行く事が大事なんだと言い聞かせて今日はおわり。